第321章

ところが川崎正弘は、本当に野呂栞に車を貸してしまった。彼は助手席。ハンドルを握る野呂栞は、彼のセダンをまるでスポーツカーみたいに走らせる。

野呂栞は……鬱憤を晴らしていた。

川崎正弘は肝が冷えっぱなしで、つま先に力が入る。口を開く勇気なんて、欠片もない。

彼女はわざわざ路面の荒い山道ばかり選び、車はガタガタと跳ねた。哐铛哐铛、と鈍い音が連続するたび、川崎正弘は車が痛がっている気さえした。

これはセダンだ。スポーツカーじゃない。

改造してなかったら、こんな運転、ひとたまりもない。

――その瞬間。

ボンッ、と嫌な破裂音。底回りが完全に逝って、エンジンが沈黙した。

野呂栞は車を一瞥...

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